『ドラッカー名言集 仕事の哲学』より。
必要な仕事を決めるのは成果
いかなる道具をいつ何のために使うかは、成果によって規定される。
必要な仕事を決めるのは成果である。
作業の組み立て、管理手段の設計、道具の使用を決めるのも成果である。………『マネジメント』
出典:P.F.ドラッカー(2003)『ドラッカー名言集 仕事の哲学』 ダイヤモンド社 p.40
今日は、世間や周りの声(知識、情報、もっともな意見やアドバイスなど)に意識を奪われる日常で、時おり思い出していただきたいことについてお話しします。
手段や道具に万能薬はなく、当事者それぞれの状況によって必要性は違ってくるというお話です。
ドラッカーさんの本について
私は冒頭の言葉が書かれている、『ドラッカー名言集 仕事の哲学』という本にとてもお世話になっています。
日常利用として使いやすく、くり返しくり返し読んできました。
この本が出版される前まではドラッカーさんの本は難しく、読むのが大変(一度読むだけでもとても骨が折れる)で、日常で読み返すという点では個人的に使いづらい部分がありました。
頑張って一度は読んでみたものの、その後は本棚に入ったままの状態が続いていました。
「(方向性として)自分に合わないな~」「しっくり来ないな~」と思って読まなくなったのならよかったのですが、合う合わないという以前に「難しいな~」「よく分からないな~」と思って読まなくなってしまったので、ちょっとした挫折感みたいなものも残っていました。
結果として、なんとなく惹かれるものがありながら敬遠してしまうようになり、しばらくは他の著作を手に取ることもありませんでした。
数年が過ぎて、この本(『ドラッカー名言集 仕事の哲学』)が本屋さんで平積みになっているのを見かけました。
「名言集なら読めるかな~」と思いながら軽い気持ちで本を開いてみると、予想以上に「これは、いい!」と思えるものでした。
この本は1ページに1つの内容で、分量も3行~5行のものが多く、とても取っつきやすいです。
日常で気になるエッセンスを思い出したい時や、指針として意識したい時に、パッと開いてパッと読み返せるので非常に重宝します。
また、単に短くて読みやすいだけはありません。
ほどんどの著作の訳者である上田惇生さんが、ドラッカーさんの主な著作から中核的な言葉を抜き出してくれているので、いろんな著作のエッセンスを吸収できるという点でも私にとっては大変ありがたいです。
(ちなみに冒頭の名言の後に『マネジメント』と書かれていますが、これは『マネジメント』という本で語られた言葉という意味です。)
当事者が自分で決める問題
皆さんにとって、読書(本の活用)の目的は何でしょうか?
人それぞれ、その時々で、あるいは本のジャンルによっても違うでしょう。
何か新しいことを学ぶ時には、詳しい知識よりも、基本的なことや大まかな全体像が掴めることを求めているかもしれません。
心や体が疲れた時には、息抜きになることや癒されることを求めているかもしれません。
朝一番に、一日の行動に弾みをつける目的で本を読むこともあるかもしれません。
私の場合ですと、内省したり深い思考をしたりする時に、自分の考えを浮き上がらせてくれることや言語化してくれることを求めていることもあります。
ドラッカーさんの本で言えば、私は目指す方向性を見直したり、行動の指針や意思決定の参考にしたいという気持ちを持っていました。
当初はその目的が叶わないまま終わってしまったわけですが、数年経って『名言集シリーズ』に出会ったことでそれができるようになりました。
ドラッカーさんの本で私がこれまで頻繁に読み返してきたのは、名言集シリーズの2冊(『経営の哲学』と『仕事の哲学』)です。
後にもう1冊、解説本(『ドラッカーに学ぶマネジメント入門』片山又一郎著、ダイヤモンド社)を買ったので計3冊になりましたが、結局それ以外の本はその後もほとんど手に取ることなく現在に至っています。
もしかしたら「名言集や入門書だけでいいの?」「代表的な著作くらいは読んでおかないと…」と感じる人もいるかもしれません。
しかし、そもそもドラッカーさんの本自体、人によっては読んでも読まなくてもどちらでもよいものです。
読む必要性を感じた人が、必要性を感じた分だけ読めばよいものだと思います。
たまたま私はドラッカーさんの考えがしっくりきて、好ましい影響を感じるので活用していますが、そうでない人は他の著者の本を読んだ方がずっといいかもしれません。
冒頭の名言に照らして考えると、
「本という道具をいつ何のために使うかは、成果によって規定される」となりますから、
個々の求める成果から考えて、個々に規定すれば(=決めれば)よいということになります。
また、もし名言集や入門書だけでは少々こころもとないと感じるとしても、それでも以前の私のように挫折したままの状態に比べれば、ずっと増しだというセカンドベストの見方もあります。
使い勝手も重要な要素
先ほどお話ししたように、日常で気になるエッセンスを思い出したい時や指針として意識したい時に、パッと開いてパッと読み返すという感じで私は名言集シリーズを活用してきました。
どんな物事でも実践することを目的としていた場合、実際やっていく段階で活用しやすいかどうかはとても重要な要素だと私は考えています。
頭で理解するまでのプロセスよりも、実践していく(し続けていく)道のりの方がはるかに長いからです。
机の上である程度理解できたとしても、それが日常で咄嗟に思い出せるかといえばそうではありません。
日常で咄嗟に思い出せるようになるには、私の場合はある程度くり返し再認識することが必要です。
日常で行動に反映させていくことを見込めるようになるのは、それからです。
日常でパッと思い出せるようになってはじめて、やっと行動に移せるようになっていきます。
そうやって少しずつ実践につながっていくことで、ようやく成果につながる道筋が見えてきます。
私は今お話ししたようなプロセスで自分の行動が進展していくと考えていますので、成果からグーっと遡って、「日常で再認識しやすいこと」が個人的にとても重要な要素となっています。
ただ、これはあくまで私が私という人間(人材)に実践してもらって、成果につなげてもらう上で重要な要素ということで、皆さんにも当てはまるかどうかは分かりません。
通ずる感覚がある人もいるでしょうし、ピンと来ない人もたくさんいると思います。
理念や行動指針の使い勝手も同じ理由で
私は組織の一員として何かに取り組んでいく際には、理念や行動指針、作業の基準などが最低限でも明文化されていて欲しいタイプですが、それは私が日常でくり返し認識できることを重視しているからです。
本の活用に関して「実践段階での使い勝手(=日常で再認識しやすいこと)も重要」というお話をしましたが、それと基本的には同じです。
指針や基準が明文化されていない場合は誰かが口頭で言うしかありませんが、言う人がその都度違っていると往々にして内容も微妙に違ってきます。
また、明文化する際には伝わりやすさや誤解しやすさなど、文章の表現も少なからず吟味をすると思いますが、業務を行いながらの合間のやり取りではそこまで気を回してはいられないのが普通です。
個々の理解や実践の上でも不都合が大きいと思いますし、組織としての共通認識(共通品質)や効率の観点でも不都合を感じてしまいます。
とはいえ、これもまた先ほどと同様で、私にとっては重要な要素ではありますが、そんなものはなくてもいいという人(組織)も多いでしょう。
「やった方がいい(と誰かが言っている)こと」に意識を奪われがちですが…
ドラッカーさんの名言をもう一度。
いかなる道具をいつ何のために使うかは、成果によって規定される。
必要な仕事を決めるのは成果である。
作業の組み立て、管理手段の設計、道具の使用を決めるのも成果である。………『マネジメント』
出典:P.F.ドラッカー(2003)『ドラッカー名言集 仕事の哲学』 ダイヤモンド社 p.40
今日は本(という道具)について取り上げて、お話を進めてきました。
ドラッカーさんの言葉によると道具に限らず、必要な仕事、作業の組み立て、管理手段の設計と、何に関しても同じように考えることができます。
今日お伝えしたかったことは、まず一個人として考えて、皆さんには皆さんの成果を出しやすい、力を発揮しやすいやり方や、つまずきやすいポイントがあるということです。
そして、皆さんの特性や傾向から、皆さんそれぞれに合った工夫ややりくりが浮上してくるだろうということです。
また組織をマネジメントする立場としても同様で、皆さんそれぞれの組織(スタッフ)に合った、成果につながりやすいマネジメントの仕方が浮上してくると思われます。
成果からグーっと遡って考えて、プロセスのどこかで大きな不都合を感じる場合には、外野の声に惑わされず皆さんそれぞれに合ったセカンドベストでやっていただきたいと私は考えています。
日常では「やった方がいい(と誰かが言っている)こと」に意識を奪われがちですが、「現実として(自分が感じている)不都合が大きいこと」の観点もちょくちょく思い出してくださいね。