「考え方の傾向」を意味する言葉
「マインドセット」とは、物事を捉える時の「考え方の傾向」を意味する言葉です。
人の判断や行動を左右する「考え方の根っこ」のようなもので、先天的な資質だけでなく、生まれてからの経験や教育、時代背景によっても違ってくるものです。
成功体験や失敗体験、家庭環境や生い立ち、今属しているコミュニティ、日ごろ接することの多い人物やテレビ番組など、様々な要素によって形成されています。
最近ではSNSやYouTubeなど、WEBメディアによる影響も大きいでしょう。
後天的要素の影響も大きいので、環境やコミュニティ、習慣を変えていくことで、意識的に変えていけることも注目すべきポイントです。
「実用日本語表現辞典」の解説が比較的分かりやすかったので、ご参考までに。
マインドセットの意味
マインドセット(mindset)とは、自身の習性として根付いた物の見方や考え方を意味する表現。「思考態度」と訳されることもある。先入観・信念・判断基準・無意識の思い込み等々の思考の傾向を指す。
英語におけるマインドセット(mindset)
マインドセットは英語のmindsetをカタカナ表記した外来語である。れっきとした英語の語彙であり、和製英語ではない。英語のmindsetの意味・ニュアンスも日本語の「マインドセット」とおおむね同じである。英語では、たとえば change one’s mindset(見方を変える・意識を変える)といった言い回しで用いられる。
実用日本語表現辞典
「マインドセット」に着目する理由
多くの人が「マインドセット」に着目するのは、なぜでしょうか?
それは、人の成果を大きく左右するからです。
人は日常の選択を、無意識の「考え方の傾向」によって方向づけられています。
人それぞれ特有の「考え方の傾向」が、意欲や行動にまで影響を及ぼしています。
勉強や仕事、趣味や健康管理など、どんな場面でも意欲や能力を引き出したり、抑え込んでしまったりすることもあるため、具体的な判断や行動の内容だけでなく、根っこにある「考え方の傾向」に目を向けることも重要です。
企業や組織における「マインドセット」
「マインドセット(=考え方の傾向)」は個人だけでなく、企業や組織にも存在します。
企業の「マインドセット」は、理念やビジョン、行動指針といった価値基準が、文化や風土という形で表れてきます。
しかし、価値基準が無かったり、価値基準があっても実態とかけ離れていたりする場合には、社内で影響力の大きい人物の「考え方の傾向」が文化や風土を決定づけてしまいます。
特に中小企業の場合は、経営者の「考え方の傾向」が及ぼす影響は大きいでしょう。
そのため経営者の方は、自分(経営者自身)の「考え方の傾向」を俯瞰し、自覚することが重要になります。
また、自分(経営者自身)の「考え方の傾向」が自らの成果だけでなく、組織全体に影響を及ぼすことも心得た上で、自分(経営者自身)の人間関係や日々接するメディアを見直したり、属するコミュニティや習慣を変えたりすることも必要かもしれません。
中小企業の場合は、経営者自身の「考え方の傾向」が変わることで組織の文化や風土に変化が起こることが多いですが、それだけで追いつかない場合には、組織内の指針やコミュニケーションを見直したり、浮上してきた課題に取り組む必要性も出てくるでしょう。
従業員の「マインドセット」
従業員の「マインドセット(=考え方の傾向)」は、複合的な要素によって形成されます。
会社の評価基準や組織風土といった職場から受ける影響と、身近な上司や影響力の大きい人といった特定の人物から受ける影響です。
プライベートや別のコミュニティでは違う「考え方の傾向」を持っていても、仕事の時には属している組織(職場)に適応するための「マインドセット」なってしまう傾向もあります。
「マインドセット」を変えていくには?
「マインドセット」を変えていくためには、「自分は日頃どんなマインドセット(=考え方の傾向)なのか?」を振り返ることが出発点です。
振り返ることで、現実に即した流れが浮き彫りになってくるでしょう。
見過ごせない問題があると強く感じれば、何らかの課題に取り組む流れに向かうでしょうし、特に問題を感じなければ、これまでの流れのまま進んでいくと思われます。
振り返りの方法については、人それぞれやりやすいもの、続けやすいものでよいと思います。
日記を書くことを習慣にしている人は、その中で自分の考え方を振り返ることもあると思います。
あるいは自分一人ではなかなか難しいので、誰かにコーチングなどをしてもらうことが必要という人もいるでしょう。
ちなみに私は日記を書く習慣はありませんが、日常のどこかでテーマを決めず静かに考える時間を持つようにしています。
本を読みながら考えたり、映画やドキュメンタリー番組を観ながら考えたり、過去のメモ紙を見ながら考えたりと様々ですが、その中で自分の考え方を振り返ることも多いです。
私の場合は白紙の紙とにらめっこして考えていても何も進まないので、本やドキュメンタリー番組でいろんな見識や考え方に触れて、自分の現実をオーバーラップさせながら考えていくのが基本です。
仕事柄いろんな考えやアイデアを体系化するために本を読むことも多いので、そういう作業の中で触発されて、振り返りの時間になってしまうこともあります。
補足:こんなことを言ってはなんですが…
ここまで「マインドセット」についてお話ししてきました。
が、こんなことを言ってはなんですが、私はこの言葉をあまり使っていません。
「マインドセット」という言葉がいつごろから広まってきたのか分かりませんが、個人的にはこの言葉をあえて使おうと思う場面は少ないです。
理由は、人によって解釈が違っていたり、ピンと来ない人がいたりすることや、自分の感覚としてもしっくり来ない時があるからです。
私は20代の頃(90年代後半~2000年頃)に、「考え方の根っこ」を変えていく必要性や、静かに考える時間を持つこと(=振り返ること)の重要性を痛感しました。
そして2002年くらいから、考える時間を持つこと(=振り返ること)を習慣にしています。
ですので、もう20年以上になります。
※私が「自問」をするようになったきっかけの記事(『考えていたことを上手く言い表せた時に、はじめて、自分が何を考えていたのか本当によくわかる。』)参照
今日お話しした内容の重要性について、認識は20年前からほとんど変わっていませんが、「マインドセット」という言葉の部分だけが違っています。
私は「マインドセット」という言葉を使わず、その時々の文脈に合った言葉、たとえば「価値観」や「ものの見方」、あるいは「前提の発想」や「日ごろ意識が向かっていること」といった言葉で表現してきました。
プロフィールの中で、「当たり前の感覚(文化・慣習、考え方・感じ方、視点・視野、避けたい事や関心事…)」という表現をしたり、「他社と張り合う発想」や「他社と補い合う発想」といった表現をしているのも、同様の私なりの工夫です。
自分以外の人がこの言葉を使っていれば、どんなことを言おうとしているか分かりますし、相手に合わせてやりとりもできます。
しかし、別の表現をすることにも慣れていますし、別の表現の方が文脈を損なわない印象もあります。
もし「マインドセット」という言葉がしっくりこないとか、掴みどころが無い感じとか、あるいはシンプルに横文字がキライという方がいらっしゃったら、無理して使う必要はないと思います。
私と同じように、別の言葉で表現してもよいのではないでしょうか。
自分(自分たち)が理解しやすかったり、実践しやすかったりすることが第一ですから。
もちろん、もうすでに当たり前のようにこの言葉を使っている方や、一言で言い表せるからこの言葉を使った方が便利という方は、どんどん使っていただければ結構です。
皆さんそれぞれに合う使い方をしてくださいね。
