今日は「ダブルループ学習」について。
この記事を書く前に、「ダブルループ学習」で検索して、いろんなサイトの解説を読んでみました。
あらためて「なるほど!」と再認識させてくれる解説もありましたし、「なんとなくしっくりこない…」と感じるものや、「解説が詳しすぎて日常では使いづらいな~」と感じてしまうものもありました。
もちろん、これは私の個人的な感想です。
書き手も読み手も、人それぞれで重視しているものが違うため、どんな解説でも合う合わないがあると思われます。
今日の私のお話も、「合わないな~」と感じたら読み捨ててくださいね。
「ダブルループ学習」の「学習」とは?
「ダブルループ」の解説から聞きたいかもしれませんが、まず「学習」について。
ここでの「学習」というのは、「学校などで勉強すること」や「誰かに学び習うこと」ではありません。
生理学や心理学において「学習」とは、「経験によって新たな行動の仕方を習得すること」を意味します。
簡単に言うと、「経験によって行動が変わること」ですね。
「ダブルループ学習」の「学習」は、こちらの意味合いになります。
ここまでの話で「ダブルループ学習」とは、「勉強」や「習うこと」についてのお話ではなく、「経験によって行動が変わること」のお話だと理解できます。
あとは、それが「どのように」変わるかという部分ですね。
「シングルループ学習」と「ダブルループ学習」
「ダブルループ学習」と相対するものとして、「シングルループ学習」があります。
「学習」とは、「経験によって行動が変わること」でした。
「シングルループ学習」というのは
「経験によって、前提はそのままで、行動が変わること」、
「ダブルループ学習」というのは
「経験によって、前提も掘り下げて、行動が変わること」です。
例えば、今なんらかの壁にぶつかっているとします。
その壁を乗り越えるために、手を変え品を変え、「直接的な行動」をどんどん変えて取り組むのが「シングルループ学習」です。
一方、直接的な行動だけでなく、影響の大きい「間接的要素」もどんどん掘り下げて、
「独力では難しいのでは?」
「環境やコミュニティを変えないと難しいのでは?」
「知識や技能の問題ではなく、焦りを生んでしまう負荷やペースの方が問題では?」
「やり方(行動や方法論など)よりも、あり方(状態や捉え方など)の影響が大きいのでは?」…と、
前提条件も見直していくアプローチが「ダブルループ学習」です。
あるいは、「そもそもその壁は乗り越える必要があるのか?」と根本から見直し、
「その壁にそこまでこだわる必要はない」
「乗り越えなくても回り道でもよい」
「貴重なリソース(時間、お金、気力、体力など)を使い果たすほどではない」…
といった結論に至るのも「ダブルループ学習」と言えるでしょう。
中小企業・個人事業では、こちらの捉え方をする場面も多いかもしれません。
成果に向かえれば、言葉にこだわる必要はない
こういう新しい言葉に遭遇すると、
「こういう場合はシングルループ?」「この場合はダブルループ?」といった疑問を抱いてしまう人もいると思います。
かく言う私も、そういうタイプです。
現代は情報過剰社会で、ネットで検索すれば多過ぎて困るほどの情報(解説・ノウハウ・アドバイスなど)が出てきます。
「ダブルループ学習」についても、同様です。
しかし、本質は「前提を変えずに取り組むか?」「前提も掘り下げて取り組むか?」ということです。
そういう取り組みの区別の仕方があることを理解していれば、言葉の定義にあまりこだわる必要はないと思います。
私自身、「前提(間接的要素)を掘り下げていく取り組み」を90年代からやっていますが、「ダブルループ学習」という言葉に出会ったのは2000年代だと思います。
「ダブルループ学習」という言葉を知ったことで、前提(間接的要素)を掘り下げるようになったわけではなく、経験上「直接的な行動」とは別のところに問題を感じて、自然とそういう流れになっただけなんですね。
つまり、この言葉がなくても「前提を掘り下げる」ことはできるわけです。
また私のようなコンサルタント業であれば、こういった言葉に対応する場面も出てきますが、そうでない多くの方は本質を押さえて日常の実践に活かせれば、さほど大きな不都合もないと思われます。
私たちがやりたいことは、それぞれの目的に向かって成果を出すことです。
「前提を変えない(直接的な)取り組み」に行き詰まりを感じたら「前提(間接的要素)もどんどん掘り下げていく」
この引き出しを持てていれば、「シングルループ学習」「ダブルループ学習」の本質はひとまずOKではないでしょうか。
補足①:重視したこと
今日はあえて大ざっぱな解説をしました。
その理由は、大ざっぱな解説を求めている方に応えたかったからです。
ネットで検索すると、プラスアルファの情報を求めている人に合った、詳しい解説がたくさん出てきます。
一方、「本質だけの方がありがたい」という人に合う、シンプルな解説はあまり見受けられません。
私自身が陥りがちなこととして、「あれもこれも」と情報を入れ過ぎて本質を見失うことがあります。
本質を見失わない範囲でプラスアルファとして頭に入ればよいのですが、ある程度のボリュームを入れてしまうと、私の場合は裏目に出ることが多いです。
そのため個人的な教訓として、本末転倒になるほどの情報はセーブすることを心がけています。
「あれもこれも」と求めすぎて本質を見失ってしまうより、まず本質だけを押さえるセカンドベストの考え方です。
そういう私自身の背景もあって、大ざっぱな解説にとどめることを重視しました。
詳しい解説が必要であれば、「ダブルループ学習」で検索してみてください。
補足②:私の役割
このブログの記事をいくつか読んでいただいた方は何となく感じているかもしれませんが、「シングルループ学習」の情報があまり見当たらないと思います。
このブログでは、「間接的に影響を及ぼす要素を掘り下げたり、根本的な発想や価値基準を見直したり…」といった内容を主な論点としています。
「ダブルループ学習」のお話ですね。
私たちは日ごろ、「前提を変えない取り組み」の発想に染まりがちです。
日々スマホを通して受ける影響も、自分を取り巻く人間関係でのやりとりも、「ハウツー情報」が圧倒的に多いからです。
もちろん、それ自体は問題というわけではありません。
「ハウツー思考」で解決する事柄も多いですから。
一方で、「ハウツー思考」では解決しにくい次元の問題も少なくありません。
「掘り下げて考える」必要性を感じている人も多いでしょう。
問題は、「前提を変えない取り組み」では解決しにくい実情を経験から察しているにも関わらず、次から次へと押し寄せる「ハウツー情報」に引きずられて、それに終始してしまうことです。
私自身もこれまで数えきれないほど、「ハウツー情報」の波に飲まれてきました。
手前みそになりますが、途上でこういったブログに出会えていたら、かなり違っていただろうと感じています。
私の仕事は、「ダブルループ学習」の支援をすることです。
日常で意識が薄まりやすく、供給も不足している「ダブルループ学習」の支援を、自分の担当領域としています。
このブログでは、日々の具体的な判断や行動、意欲や能力に「間接的に影響を及ぼす事柄」について取り上げています。
「ハウツー思考」が強く助長されてしまう社会で、「掘り下げて考える」一助になれば幸いです。