補足・こぼれ話

会社の公用語は「英語」? それより「敬語」はどうでしょう?

 

「あってもよいのでは?」というお話

 

近年、日本の企業でも社内の公用語を英語にしようという流れが出てきました。

例えば、「楽天」や「ファーストリテイリング(UNIQLO)」などは有名で、他にも大企業においては、そのような流れの企業が増えてきているようです。

 

ところで、私がこれまでいろんな職場を体験してきて、「こんな会社があってもよいのでは?」と感じていることがあります。

それは、「英語」ではなく「敬語」を公用語とする会社です。

 

社会人として働いていたら「敬語」を使うなんて当たり前で、「敬語を公用語ってどういうこと?」と感じるかもしれませんが、「敬語」が使われていない場面は意外と日常的に見受けられます。

分かりやすいところで言うと、例えば上司が部下に、年上が年下に、先輩が後輩に話すような場面です。つまり、目上の人が目下の人に話す場面ですね。

他にも同期の間柄やフレンドリーな関係性においても見られますし、あるいは稀に、誰彼かまわずタメ口で話す人に遭遇することもあります。

 

「敬語」を公用語とする会社とは、そういう関係性でも、社内(職場)でのコミュニケーションは「敬語」で話すことにする会社のことです。

多くの会社がそうすべきとは言いませんが、もっと身近にあってもよいと思います。

 

本質的でないところのつまずきはもったいない

 

先ほど挙げたようなケースで、目上の人や親しい間柄、あるいはタメ口で話す側の人が不快になることはあまりないでしょう。

しかし、目下の人や礼節を重んじる人、あるいは当事者の周りにいてその会話が耳に入ってしまう人の中には、胸中穏やかでない人が思いのほかいるかもしれません(サービス業の場合はその会話をお客様が耳にするケースもあります)。

 

私は世間一般の多くの人と比べて、多種多様な組織で働いた経験がある方だと思います。そして、目下の立場で働いた経験も多い方だと思います。(※プロフィール参照)

 

新しく組織に属すると、いろいろ仕事を覚えていくことになりますが、早々に働く意欲が削がれてしまった会社(職場)は少なくありません。

言葉遣いやものの言い方、あるいは敬意や配慮の欠如によってやる気が削がれてしまう会社(職場)も珍しくはありません。

 

人材開発(力を発揮しやすい条件を整えること)の観点からすると、コミュニケーションの内容ではなく、コミュニケーションの仕方でつまずいているのは非常にもったいない話です。

スタッフの働く意欲が削がれてしまうことは、スタッフを募集する段階からかけてきた時間、お金、労力を捨ててしまうようなものなので、経営の観点で考えてももったいない話です。

 

どんな観点で考えても、本質的でないところでのつまずきはできるだけ避けたいところです。

 

「敬語」には「敬意」が呼応

 

「敬語」というのは、「相手を高める」「自分がへりくだる」「丁寧な表現にする」の三つですね。

当たり前の話ですが、「敬語」には、「自分を尊大に示す」「相手を低く置く」「ぞんざいな表現をする」という要素は入っていません。

本質が相手に対する「敬意」ですから、「敬語」を話す際には自然と「敬意」が呼応してきます。

 

もちろん相手が「敬語」を使っていても、不快に感じることはあると思います。

ただ、それは話の内容や言葉の語気の問題で、「敬語」だから不快ということではない気がします。

そういうケースで「敬語」じゃなかったら、もっと不快になっているのではないでしょうか。

 

多くの人がすでにバイリンガル

 

「敬語」を公用語として導入することになった場合、「英語」の導入と違って喜ばしいことがあります。

それは、多くの人がすでにバイリンガルだということです。

 

「敬語」を使えないわけではありません。すでに多くの人が日常的に使っています。

相手や場面によって、使ったり使わなかったりしているだけです。

それを相手によって変えたりせず、ワンパターンにするだけでいいのです。

 

実際に導入することになった場合には、もちろん自分(経営者自身)も「敬語」になります。

社内での関係性を踏まえると、自分(経営者自身)が全てのスタッフに「敬語」を実践・継続できれば、「敬語」の公用語化はそれほど高いハードルではない気がします。

ただ、心理的にも運用的にも導入時の現場の負担が大きくならないように、準備期間を設ける必要はあると思いますが。

 

今日は「英語の公用語化」にちなんで、「敬語が公用語の会社が身近にあってもよいのでは?」というお話をしてみました。

多くの会社にとって縁のない話と感じるかもしれませんが、個人的には「英語の公用語化」よりずっと身近な問題に感じています。