余話(補足・こぼれ話)

名著『人を動かす』← この日本語版タイトルについて思うこと

【雑記】

 

●邦題『人を動かす』← 原題は『友人を作り、影響力を与える方法』

もう90年近く売れ続けている名著『人を動かす』

デール・カーネギーの代表的な著書で、日本国内で430万部、世界で1500万部以上を売り上げています。

 

私は20代後半の頃はじめて読みました。

30歳くらいの時にはオーディオカセット版を買って、車の中でくり返し聴いていました。

今のようにサブスクがない時代で、あれもこれもと買えない状況だったので、こればかり聴いていたと思います。

 

で、「車で何度も聴くほど力を入れて効果はあったのか?」というと…

主観的には「微妙」という感想です。

この頃は、まだ微妙でした。

 

その原因は何か?

当時は、この本を読む自分の「あり方」に問題がありました。

簡単に言うと、「自分本位」過ぎていたということですね。

 

でも、ちょっとした弁解もあります(笑)

この本の邦題について。

 

『人を動かす』

この日本語版タイトル、少し操作的な感じしませんか?

 

原題は『How to Win Friends and Influence People』です。

直訳すると『友人を作り、人に影響を与える方法』。

『人を動かす』とは、だいぶ印象違いませんか~?

(そう感じるのが私だけだったらスミマセン)

 

この本が書かれた90年前の背景を少し。

 

90年ほど前は、アメリカ人にとっても人前で話すことが苦痛と恐怖でした。

「人前に出るとあがってしまい、パニックで頭が真っ白になって何を言っていいかわからなくなってしまう」

「心臓がドキドキして、何も言葉が浮かばない」

多くのビジネスマンが、そう感じていたそうです。

 

著者のデール・カーネギーは、ニューヨークで社会人向けの講座を主催し、「話し方」を多くのビジネスマンたちに教えていました。

そんな中で、プレゼンの技術の次として、「人とのつき合い方の本を書いてみてはどうか?」と編集者から提案されます。

それで生まれたのが、『How to Win Friends and Influence People』です。

 

最初は、タイトルを『How to Get the Welcoming-In Response(友好的な反応を得る方法)』とするつもりだったようです。

時間が経つにつれて、『How to Make Friends and Influence People(友人を作り、人に影響を与える方法)』にしようと思い直します。

 

しかし本のデザインの段階で一文字多いということで、変更を余儀なくされました。

カーネギーはタイトルの中の「Make」という単語を、一文字少ない「Win」に変えます。

それで最終的に、『How to Win Friends and Influence People(友人を作り、人に影響を与える方法)』になったようです。

(※この「Win」は「勝つ」ではなく、「Make」と同じく「作る」という意味合いです)

 

以前の私がこの名著を活かせなかったのは、動機が「自分本位」だったからです。

それは間違いありません。

 

それにしても原題『How to Win Friends and Influence People(友人を作り、人に影響を与える方法)』が、日本語版では『人を動かす』に。

意訳が過ぎませんか~(笑)

 

では邦題が『人を動かす』ではなく、『人間関係の技術』とか『人とのつき合い方』とかだったら、以前の私でも多少違っていたんでしょうか?

あるいは以前の私が原題『How to Win Friends and Influence People(友人を作り、人に影響を与える方法)』を知っていたら、多少違っていたんでしょうか?

 

あまり変わらなかったかもしれませんね(笑)

この本は「他者に対する配慮」が根底にあり、その土台のもとで具体的にどう意識・行動していくかのお話ですから、動機が「自分本位」だったら実践するのは難しそうですね。